2010年1月26日火曜日

梱包された犬

総経理は、学生の頃 演劇部に入部していた。
3年生の春 新歓公演で 竹内銃一郎の「悲惨な戦争」をやった。
ある家庭が局所的に攻撃されるお芝居。
このお芝居の内容や竹内銃一郎の真意を理解する事も出来ないのに、
単純にそのシチュエーションを面白がった。
所詮 学生の御遊びです。

総経理がやった役は、その家庭で「犬」として扱われる男。
内面的な役作りなんぞ出来ないので、外面的な役作りばかり。
犬の役だから、首輪をしてなければならんと、
土佐出身の同級生から、実際に闘犬が着用した血痕、抜けた毛付き、
犬の匂いがする首輪を入手した。
当時 猫十字社の「黒のもんもん組」が好きだったので、
衣装は、上半身裸、モンペ地下足袋、ドレッドヘヤ―とした。
これだけだと、インパクトが少ないので、
体育館座りの状態で、模造紙に梱包されて、担ぎ込まれて登場する事にした。
客入れ前(開演30分以上前)に、梱包され 教壇に置かれた。
馬鹿ですね。

未だ肌寒い春だが、梱包されていると暑い。首輪の犬の匂いで息苦しくなる。
舞台に担ぎ込まれ、梱包を破って登場した時は、
演技では無く、本当に「ブファッ!」と
溺れそうになり、水面から顔を出した様な状態で 飛び上がった。

セリフは、まったく覚えていないが、芝居中にドッグフードを食べりした。
エンディングでは、犬の男以外は、皆戦死。
犬の男は、長ゼリフの後 遠吠えをし、床からフワリと窓の桟に飛び乗り、
「ワォ~ン」と吠えながら、黒の模造紙を突き破って 外に飛び出し、
庭を駆け去っていく。暗かった教室に陽の光が サンサンと降り注ぐ。
模造紙を突き破って、飛び出した時の爽快感は 最高だった。


豆苗とマッシュルーム炒め、塩焼きスパ、
微塵切りマッシュルーム入りポタージュ(雪ん子が送ってくれた)
良い子は皆 遠吠えして お休み。