2015年12月19日土曜日

Slaughterhouse on My Life

20代から30代前半の10年間
俺は 一ヶ月に一度 屠場に行き
長い時には 数か月 毎日通っていた。

屠場の廃水を処理するのが目的だ。
学者さんが調査したところによると
豚一頭から出てくる血液と洗浄水が
BODいくらで 水量がいくらとある。

屠場の廃水を制するのは 血液にある。

追い込みから テーブルに 豚が乗ると
電気で 仮死となり フッッキングされ
頸動脈を切る。

この血液を分別できれば 廃水のBOD負荷は極端に減る。
血液に温度を掛ければ 煮凝りになる。
で 煮凝り製造装置を作る事になった。

屠場の朝は 早い
朝が明けやらぬうちから
潰しの現場に入り バケツ何倍分の血液を採取し
その後の洗いの水量を計る。

煮凝りは簡単で
煮凝りを金魚の餌にすると
鮮やかな真赤な金魚になる。
問題は水洗水の処理だ。

水洗水と活性汚泥を混ぜ 曝気すると
茶色の汚泥は 鮮やかな赤になり
ルビーのような フロックになり
処理速度が急激に進む。

このルビーの様な赤に魅せられた。

一方で 屠場に働く人達の事を知る。
偏見や 差別 
それは 屠場の裏で
ツラを茹でる人達
皮を剥き 毛を剃りあげる人達にも向けられる。

「ある精肉店のはなし」は秀逸な映画だと思うけど
もし こうだから 命を大切に 感謝して食べようと思うなら
実際に潰しの現場を見に行こうよ。
「世界屠畜紀行」を書き
自分で育てた豚を屠り 食べた内澤旬子の様に。

屠場排水処理は 俺のライフワークだと思っているのに
あれ以来出会う事が無い 残念だ。