表題作「第六ポンプ」を始め、
近未来の環境、食物、エネルギー(カロリー)を軸に
これらを独占する側と搾取される側の話だ。
二コラ・グリフィスの「スロー・リバー」と
近い世界観だけど よりパンキッシュだ。
でも ちょっとリアルなTPP食材にも繋がる。
「イエロー・カード・マン」に 俺は激しく反応した。
マレーシアで ある宗教を信じる多勢民族が
経済を掌握している華人を殺戮、搾取しマレーシアから排斥した。
生き延びた華人は、タイに流れ込み
「イエロー・カード難民」として 最底辺で生き抜いて行く。
同収録の「カロリー・マン」同様の造語が頻繁に出てくる。
ゼンマイで生きる偽人間「ねじまき少女」が 夜の街を彷徨う。
解説によると二作は、長編「ねじまき少女」の助走的短編の様だ。
「イエロー・カード・マン」は、SFなのだけど
マレーシアで考えられる ワースト・シナリオのリアル近未来だ。この国で いつまでマレー人、華人、インド人が
民族間不可侵で共棲できるのだろうか?
この短編を読んで
この国が 民族間の不安定なバランスで
成り立っていると あらためて思った。