2014年5月20日火曜日

パオロ・バチガルビ著「第六ポンプ」

パオロ・バチガルビの近未来短編集だ。
表題作「第六ポンプ」を始め、
近未来の環境、食物、エネルギー(カロリー)を軸に
これらを独占する側と搾取される側の話だ。
二コラ・グリフィスの「スロー・リバー」と
近い世界観だけど よりパンキッシュだ。
でも ちょっとリアルなTPP食材にも繋がる。

「イエロー・カード・マン」に 俺は激しく反応した。

マレーシアで ある宗教を信じる多勢民族が
経済を掌握している華人を殺戮、搾取し
マレーシアから排斥した。
生き延びた華人は、タイに流れ込み
「イエロー・カード難民」として 最底辺で生き抜いて行く。
同収録の「カロリー・マン」同様の造語が頻繁に出てくる。
ゼンマイで生きる偽人間「ねじまき少女」が 夜の街を彷徨う。
解説によると二作は、長編「ねじまき少女」の助走的短編の様だ。

「イエロー・カード・マン」は、SFなのだけど
マレーシアで考えられる ワースト・シナリオのリアル近未来だ。
この国で いつまでマレー人、華人、インド人が
民族間不可侵で共棲できるのだろうか?
この短編を読んで
この国が 民族間の不安定なバランスで
成り立っていると あらためて思った。