学生の頃 何度も「献血」した事がある。
日本赤十字社の献血車で 献血したわけではない。
日赤の献血でも採血後 乳酸菌飲料を貰えるが、
この「献血」では、千円分の食券が貰えた。
クラブの医学部の先輩から「悪魔の様に囁かれ」て
医学の進歩の為に 血液を献じる「献血」。決して 売血では無い。
最初は、大学病院にあった「帝国ホテル」系列のレストランの食券。
ただし 千円で食べられるのは カレーライスだけの上、
とても優雅な盛り付けなので お腹がいっぱいにならない。
食堂選ぶ「大きな自由」をくれと 先輩に 泣いて頼んだ。
当時 大学の近くで 食事が出来る所がなかった。
構内で食べられる所は、他に「学食」「ドミトリー」「カフェ」があった。
「カフェ」は、サンドイッチ程度しか作っていない。
「学食」は、千円であれば、三、四食分にはなるが、頗る不味い。
「ドミトリー」は、研修医やナースが利用する食堂で、
「学食」より美味しく、メニューはちょっと高級 お値段もちょっと高級。
千円だと 二食弱ってとこだった。
選択する「大きな自由」は ただ一つ。当然「ドミトリー」の食券千円分だ。
医学の進歩の為に クラブの後輩まで引き込んで、何度も「献血」した。
中には 採血されている自分の血液を見て、気が遠くなった軟弱な後輩もいた。
後で食べるであろう「トンカツセット」に想いを馳せ、
シリンジの中に入って行く自分の血を眺めながら
「大きな自由」を口ずさんでいた。
♪いつか晴れた日 目覚めた朝に 血を越えて 愛し合えたら♪
もう30年以上も昔の話、あの血液は、なんか医学の役に立ったのだろうか?
現在は「献血」しなくても 自炊ではあるが「トンカツセット」が食べられます。