家族と数年過ごした町を離れ
独り暮らしを始めたのは もう 40年位前の事。
その頃 チョットだけ ケッペキ少年だったので
コインランドリーで 衣服を洗濯するのに抵抗があり
週末は 洗濯物を担いで 実家に帰っていた。
毎土曜日には 市ヶ谷から 素敵なあの娘が
電車を乗り継いで 神奈川の田舎まで来てくれた。
そして 僕は 彼女が来る ほんの数分前に パスタを茹でる。
「また 来たよ」と彼女がドアを開けると そこは 台所で
ショッキング・ピンクに染めた 白衣を割烹着替わりにした僕は
「よく来たね」
で 二人でパスタを食べる。
大蒜と鷹の爪のパスタだったり
トマトのざく切りをあわせたパスタだったり
塩と胡椒のパスタだったり
ライクーダー、リトルフィート、ジョーサンプルのLPを掛け
パスタを食べる。
「この曲ってさ よせテルデ よせテルデって聞こえるよね」
って 他愛無い 話をして 土曜日の午後を過ごし
僕らは 一都二県 二つの河を越えて お家のある町に帰る。
僕達が出会った 小さな町の駅前にある 小さな喫茶店
そこで また 過ごす。
ここには いろんな人が居たけど
「生聞き 60分」「この熱い魂を伝えたいんや」
を聴きながら
どうして 演者にアホとか言う 文化があるのか 悩んだ。
そして 分かりました アホと言われた瞬間
恍惚になる特殊な文化の人達が居るだって。
だから 独りで 食べる パスタは・・・