何度も同じ現場で 一緒になった人が
定年退職で 帰国するので 挨拶に行った。
将来設計の無いワタクシの
定年とアラカンの後学の為にさ。
「再雇用で 延長しないの?」
曰く
「安月給で いろんな国の いろんな現場を這いずり回されて
さらに 安い月給で 這いずり回るのは やってらんないよね
もう あっちゃこっちゃ 動き回りたく無いしさ
そろそろ 落ち着きたいしさ」
「定年後を見据えて なんか下準備したの?」
曰く
「するわけないだろ!」
「どうすんの これから?」
曰く
「あんたと同じだけど 何十年も離れた家族とは
生活のリズムが違うからな
そうだ 独りで旅に出るかな!」
そうだね ボク達は ウロツキマワル 浪人さ
安住の地を求めながら 安住出来ない 成り行き人生。
そして 想い出した 元満州馬賊のモロサンを。
仕事上の付き合いだけど
夕方 電話が掛かって来る
「ダンナ 鰻のマルで一杯やろうよ 出ておいで」とか
モロサンの着ていた カシミヤのオーバーコートは
膝下まであり 後ろのスリットは 馬に乗る時用に
腰上まで 割れていた。
で 分かれ際モロサンが 言う
「また 呑んでおくれよ ダンナ」
オレは モロサンのコートが欲しかった。
そんな 20代のオレと 60過ぎのモロサン。
何処にも 落ち着けないんだ。