2014年9月16日火曜日

「ひそやかな花園」角田光代著

角田光代が小説家である事を知らなかった。

2週間前位に「キッドナップ・ツアー」を読んでから
次々と 角田ワールドに 耽溺している。
そして「ひそやかな花園」を読了。

夏の数日だけを一緒に過ごす 7つの家族。
ある年から 夏の集いは 終わり
子供達の記憶の片隅で 夏の思い出の残滓が固まる。
そして 7人の子供達が大人になり
夏の集まりが なんだったのか
なぜ 終わってしまったのかを 知ろうとして再会する。

子供達は、非配偶者間人工授精(AID)で生まれた。
彼らは 何か他の人と違う空白(残滓)を心に宿している。
その空白を埋め 新たな扉を開ける。

「キッドナップ・ツアー」、「予定日はジミー・ページ」、
「ツリーハウス」
何れも 父、夫、男が問われていると思う。
「ひそやかな花園」では 男側に不妊の要因がある事で
問われる父、夫、男の位置を明確にしている。
生んだ妻()、生まれた子供に対して
男は 苛まれ 家族から離脱していく。

受精から十月十日 へその緒で 繋がっていた
()と子供が共有する 原初的な愛憎には 
入って行けない何かがある。

子供達の一人 樹里が離脱した父と逢って想う
「自分達は川に突き刺さった二本の棒のようだ」
「母の静けさは満月に似ていて、父のそれは雪に似ている」

ならば 暖かくなったら 融けてしまおう。
 
 

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