2017年5月25日木曜日

ペンを貸してもらえる?と彼女は言った

マラッカに行く前に KLでチョットした事を済ませる必要があった。
それは ホントに 数分で終わった。
車を止めた処に戻ろうと モノレールのプラットフォーム
申し訳ない様な ベンチに座って マラッカまでのドライブ時間と
マラッカでの約束の時刻の空白の一時間 について 考えていた。

「ねっ ペンを貸してもらえるかな?」
僕は バッグを開き
ペンを取り出し 彼女に渡した。

「ペンを忘れてきちゃったんだけど 最近の若い人達は
ペンを持って無くって 私たち 古い人間と違ってね」

「ありがとう 助かったわ」
彼女がペンを返してくれた。
モノレールの到着時間は 1, 2分遅れている。

僕はまた 埋めきれない 一時間チョットの空白を考える。

「ねっ なんで若い人達は ペンで文字を書かないのかな?」
「ほら そこに居る子達も タブレットに何か打ち込むか
話をしてるでしょ」
モノレールは また 1,2分遅れている。

僕は 彼女を確認する。
会話からは 英語が母国語で無い事が分かっていた。
地中海沿岸の国の出身なのか
少し 小さな顔 ハシバミ色の眼 クルっとした フワフワな黄金色の髪。

「そのうち 字が書けなくなっちゃうんだろな~ あの子達
ワタシやアナタと違って」

ほんの十分前の所用は 仕事の契約書の一か所に忘れたサインを
する事だった。
僕はペンを持ち 適当なサインをしたが
ここに役職名 パスポート番号を書いてと言われ
震えながら ペンで字を書いてきたばかりだ。

やがて モノレールがやって来て
「列車が来た どうも ありがとう 今日も良い日で!」
と 彼女は2両目に向かって 歩いて行った。

ベンチの裏表で 座りながら 話していた僕は
その時 彼女の全身を見た。

彼女は とても素敵に足を前に運び
スッと身体を立て 歩いていく
とても素敵な肩甲骨と一緒に。

一駅を過ぎ 降りて 車に向かう。
下から 風が吹き フッと 居なくなった。










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