「男が肉骨茶を食べる時 其の一」
まだ朝には 早く、夜も終わっていない午前5時過ぎ。
その男が歩いて来る。
男は、短パン、サンダル。シャツは着ていない。
日焼けした上半身。首筋から肩にかけて硬く筋肉は盛り上がっている。
左肩には、四つに畳んだ襤褸の様な手拭が掛っている。
港の入口近く。何軒かの肉骨茶屋台が、客を待っている。
屋台は、卓も椅子も無い。ただ 屋台前に30cm程の台があるだけだ。
男は、その内の一軒で立ち止まり、注文をする。
数分も待たず、屋台の主人が手の平位の大きさの鉢と飯茶碗を置く。
鉢には、一片のリブ、三枚肉の数塊、モツと汁。
男は、立ったまま、飯茶碗を持ち、箸で肉を取り、
飯の上に乗せる。
肉を噛み、汁が滲みた飯を2,3回かっ込む。
何回か、その動作を繰り返すと、肉、モツは無くなっていた。
まだ、飯は残っている。
男は汁を頼む。汁は 銭を取らない。
ふと、男は箸を伸ばす、肉も無い鉢へ。
男の箸は、中空で止まる。
ほんの少しの隙間、伸びた箸は中空を掴むかの様に、
或いは、まだ暗い南洋の温気を掴もうとするかの様に
望郷の念を振り切るかのように、
男は 汁を飯椀に入れ、汁飯をかっ込み、
屋台の主人に 何か呟いて、港に向かって歩いて行く。
まだ朝とも、夜とも つかない 暗闇へ。
2010年9月2日木曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
ん~ええね、腹減ってきた....
返信削除我慢して寝るべ...
to bやん
返信削除男がグリーンカリーを食べる時、
ポテチンになるのかな?